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市街化調整区域と線引き前宅地を理解する~建築要件から見るその特徴と魅力~

市街化調整区域と線引き前宅地を理解する~建築要件から見るその特徴と魅力~

いつもコラムをご覧いただき、誠にありがとうございます。

松屋不動産販売 家デパの佐伯です。

 

建物の建築コストが上がる中、徐々に引き合いが増加してきている市街化調整区域内の線引き前宅地の物件。

 

今回は、この市街化調整区域内の線引き前宅地について、正しくご理解を頂きたいので、コラムにしていきたいと思います。

 

市街化調整区域とは

日本の都市計画法に基づく区域の一つである市街化調整区域とは、積極的な市街地の発展を抑制し自然環境の維持を目指すために指定される特殊な地域のことを指します。

 

具体的には、都市計画における土地利用の規制を強め、新たに建築物を建てるための条件を厳しくさせることで環境的な負荷を抑える役割があります。

 

 

よって、原則として建物の建築はできません

 

但し、ある要件を満たす(満たしている)土地や建築主である場合は、例外的に建物・住宅の建築が許可される場合があります。

 

主だったものは以下の通りです。

  • 農林漁業従事者の方の居住用建築物(農家の方の家など)
  • 線引き前宅地の要件を満たしている土地に建物を建てる
  • 都市計画法43条の許可を得た建築行為
  • 市街化調整区域内での開発許可される開発行為
  • 既に開発許可が下りている宅地における建築行為

 など

 

なお、都市計画法による制限に加えて、都道府県や市町村がより厳しい制限を行う事(愛知県開発審査会基準、中核市である豊橋市・豊田市・岡崎市は市で開発審査会基準を設けています。静岡県も同様で、政令指定都市である浜松市も市で開発審査会基準を設けています)もありますので、市街化調整区域内で建築行為等を行う場合は、必ず行政にご相談ください

都市計画法における市街化区域・市街化調整区域のイメージ

 

市街化調整区域の定義

市街化調整区域とは、大規模な建築物の建設や、市街地としての開発を制限するために設けられた区域のことを指します。

 

都市計画法に基づき指定され、行政によって規制が行われます。

 

これは、自然環境の保護、農地の保全、風景の維持など、さまざまな観点から地域の特性を活かし、都市の持続的な発展を図るための仕組みです。

 

市街化調整区域では、新たな住宅の建設や商業施設の開発など、土地利用について厳格な審査があり、一定の基準を満たさなければ許可されません。

 

そのため、土地所有者や開発者にとっては制約となることもあります。

 

市街化調整区域の指定基準

市街化調整区域が指定される基準は、全国的に統一されてはいません。

 

しかし一般的には、その地域の自然環境や風景が優れており、保護する必要がある場合、または都市化の進行による環境の変化が懸念される場合などに指定されます。

 

 

都市計画区域内で、都市計画が定める住宅地域、商業地域、工業地域、準住居地域への変更が見込まれない地域や、農業の適地などが該当します。

 

地域の自然保全を目指すための政策であることから、基準はかなり厳格であり、さまざまな環境的、社会的要因を考慮する必要があります。

 

ちなみに、市街化区域と市街化調整区域に指定された日というものが存在します。

 

 

後の章で出てきますが、線引き前宅地の判断の基準となる日の事ですが、自治体によって異なります。

 

 
愛知県

昭和45年11月24日

 

静岡県は、西部地区に限って記載しますと、年月日がバラバラですが、以下の通りです。

 
旧浜松市、浜北市、舞阪町、雄踏町

昭和47年1月11日

 
旧細江町、引佐町の一部

昭和51年10月12日

 
旧浜松市初生町の一部

昭和61年6月20日(逆線引き:市街化区域から市街化調整区域へ変更)

 
旧三ヶ日町、天竜市の一部

平成19年4月1日

 
磐田市

昭和51年10月12日

 
湖西市

昭和51年10月12日

 

 

よって、線引き前という事になると最低でも、上記期日の前日以前から【宅地】でないと、この線引き前宅地に該当しなくなります。

 

また、新たに市街化調整区域の指定をしている地域もありますので、詳細は自治体にご確認ください。

 

市街化調整区域のメリットとデメリット

市街化調整区域にはメリットデメリットが存在します。

 

メリットとして、まず自然環境の保全が挙げられます。

 

建築物の建設が規制されることで、自然や風景が守られ、地域の特性が維持されます。

 

 

また、適切な土地利用の規制により、地域間のバランスの取れた都市発展が図られ、緑豊かな都市空間の形成に寄与します。

 

一方で、デメリットとしては、土地利用の自由度が制約されることが主な課題です。

 

特に、土地所有者や開発者にとっては、利用上の柔軟性が失われるなどの不利益を招く可能性があります。

 

また、規制が厳しいため、新たな住宅や商業施設の建設には多大な手間とコストがかかることになります。

 

 

線引き前宅地とは

不動産(土地)購入を始めようと思ったとき、土地取得が一つの大きな課題となります。

 

また、昨今の資材高騰で住宅の建築費は上がって来ています。

 

土地プラス建物の総額を出来る限り抑えたい場合、市街化調整区域内に住宅用地を求めて、この「線引き前宅地」の存在に注目が集まっています。

 

 

前章で線引きの基準は記載しましたが、例えば、愛知県であれば、昭和45年11月24日より前(よって昭和45年11月23日)から宅地であった土地について、開発審査会基準を満たして許可を得られれば、建築が可能になります。

 

一部要件はありますが、われわれのようなサラリーマン(農業従事者でなくとも)でも建築することが出来ます。

 

線引き前宅地の定義

線引き前宅地とは、文字通り区分け(線引き)がされる前から【地目が宅地】である土地のことを指します。

 

「線引き」の時期は、上述の通り各行政で定めていますが、この日が登記簿謄本で確認ができることが最低条件となります。

 

土地については、分筆したり、合筆したりして現在事項だけでは、線引き前宅地かどうか分からない土地もありますので、その場合は、閉鎖謄本を取得して、線引き日以前から地目が宅地であることを証明しなければなりません。

線引き前宅地

 

線引き前宅地の特徴

線引き前宅地は、市街化調整区域内に存します。

 

そのため、自然景観がそのまま保たれている状態で、これらの土地は価格も市街化区域と比べて安価です。

 

しかし、その反面、公共設備の整備状況や交通アクセス、周辺の生活環境などに不確定要素が多く、詳細な情報が得られないことも特徴となっています。

 

 

また、都市計画の進行については、基本的に発展する事は余りありません。

 

税金の徴収ついて考えれば分かります。

 

市街化区域内の土地建物を所有する方に毎年固定資産税と一緒に都市計画税も徴収されますが、市街化調整区域内の土地建物については、都市計画税が課税されません。

 

この都市計画税は、市街化区域内の道路や下水道の新設や整備を行う都市計画事業等の費用に充てられることを目的とした税金であるので、課税・徴収をしていないという事は、都市計画事業等は行わない(市街化区域が先)という事が税収から見ても分かると思います。

 

線引き前宅地のメリットとデメリット

線引き前宅地のメリットとして一番大きなものは、比較的低価格で土地を購入できることです。

 

市街化調整区域内の土地なので価格が抑えられ、大きい土地を手に入れることも可能です。

 

 

しかし、その一方でデメリットもあります。

 

その一つが不確実性です。公共設備や交通網の整備が行われるかどうかは未定であり、これらが整備されない限りは土地の価値の上昇は期待できません。

 

またインフラ整備なども市街化区域を優先的にやっていきますので、発展性はほぼ無いに等しいと言えるでしょう。

 

市街化調整区域での不動産購入の注意点

市街化調整区域での不動産購入を考える際には、多くの注意点が存在します。

 

一見、落ち着いた環境や魅力的な価格に惹かれがちですが、そこにはさまざまな制約やリスクが潜んでいるのです。

 

不動産購入は一生に一度の大きな買い物。しっかりと情報を得て、後悔のない選択をすることが大切です。

 

対応する自治体の確認

市街化調整区域は住宅が密集していない地域が非常に多いです。

 

そのため、行政としての対応も地元自治体によって大きく異なります。

 

 

例えば、山間部の市街化調整区域であった場合は、土砂災害警戒区域などの調査や対応なども市街化区域の方が着手は早い(住宅が密集していたりするため)ですし、下水道の供用開始時期も基本的には市街化区域優先であり、供用が開始されるにしても最後の方(若しくは供用区域外のまま)といった感じなので、購入をもし検討するのであれば、その点はあらかじめ行政似確認をしておきましょう。

 

建築要件の理解と妥協点

市街化調整区域では一般的な住宅地とは異なり、建築要件が厳格に定められています。

 

これら要件に該当しないと、建築許可が下りないこともあります。

 

必ず具体的な要件を確認し、それに対する理解を深めることが求められます。

 

例えば建築基準法や都市計画法など、都市計画区域内での住居建築に関わる法律の理解は必須となります。

 

 

また、自身がどの程度妥協できるか、リスクをとれるかも自問自答することが重要です。

 

あと、既存住宅(中古戸建・中古マンション)を購入する時は、特に注意が必要です。

 

市街化調整区域の建ぺい率・容積率は現在建ぺい率60%の容積率200(100)%となっている所が多いですが、その昔、市街化調整区域は建ぺい率70%・容積率400%(一部自治体では未だにこの基準の所もあります)と商業系用途地域と変わらない大規模な建物が建てられた時代がありました。

 

この甘い基準により、市街化調整区域内での乱開発やマンションの建築が盛んとなり、市街化区域との不均衡やそもそもの市街化調整区域の意図と外れる結果となり、平成12年5月建築基準法が一部改訂され、現行の割合へ各行政が指定出来るようになりました。

 

 

よって、その当時建てられた建築物(令和5年現在で築23年より古い建物)特にマンションは、既存不適格建築物(容積率オーバー)となっており、同規模での建替えは事実上不可能となっています。

 

もちろん分かった上で購入される分には問題ありませんが、知らずに購入すると資産価値の面で大きく目減りすることになります。

 

将来性の見通し

市街化調整区域は、一般的な住宅地と比べて価格が安い一方で、その将来性は不透明です。

 

都市計画が進むと、その区域が市街化区域に変更される可能性もありますが、それにともなう周囲環境の変化や、生活インフラの整備に時間がかかる等、不動産を購入した後の不確実性は増大します。

 

 

また、購入後の売却においては、需要の限定性から販売価格が下落するリスクも考えられます。

 

これらのリスクを理解したうえで、一生を過ごす家を選ぶ際の一つの選択肢として考えることが大切です。

 

 

線引き前宅地での不動産購入の注意点

線引き前宅地は、これまで説明してきた通りですが、いざ建築をするとなると記述しきれないほど他にも要件がたくさんあります。

 

その一部を紹介します。

  • 市街化区域内に土地を持っていないこと。要は、市街化区域内に土地があるなら、そちらに建てなさいという事

 

  • 50戸連たん 対象地からある一定の距離内に50戸以上の建物が連たんしている事が条件になります

※集落を形成して事が条件となります。端的に言うと、ポツンを1戸の家は線引き前宅地であっても建築することができません。

 

  • 最低敷地面積 自治体により異なりますが、最低敷地面積を160㎡(200㎡)以上としている事が多いです

 

  • 建築物の高さの制限 建築物の高さは10m以下や2階建までと規制している事があります

その他諸々ありますが、このように物的・人的要件を満たした上ではじめて、建築行為が許可されるという事になりますのでご注意ください。

 

対応する自治体の確認

まず最初に、線引き前宅地に対応する自治体の条例や規則を熟読してみましょう。

 

地域や都市の計画内容は地方自治体のウェブサイトや文書(開発審査会基準など)にて公開されています。

 

この情報は土地の用途地域などを規定し、どのような建物が建てられるか、どの程度の高さまで許されるか等、土地利用にあたっての制約を定めています。

 

これらを理解し、自分の計画が可能かどうか自らジャッジすることが重要です。万が一、理解が難しい場合は専門家への依頼も検討しましょう。

 

建築要件の理解と妥協点

次に、建築に関する要件と妥協点の理解も大切です。

 

通常、建築は都市計画法や建築基準法などの法律により規制されます。

 

これらに、建設地の地盤の強度、建物の耐震性、建ぺい率、容積率など、様々な規制要素を加えていきます。

 

いくら素晴らしい土地でも、このような建築規制に適合しなければ、希望した設計の建物を建てることはできません。

 

このため、法令に対応するための妥協点を見つけることも重要です。

 

 

あと、妥協点というか注意点というかなのですが、線引き前宅地の要件を満たしていたとしても、その土地の課税地目が農地に評価されている場合は、農地法5条許可が必要になり、許可が下りない限り土地の所有権移転が出来ません。

 

数年に1回程度目にしますが、特に更地にしている土地で、畑として利用している場合、行政が課税地目を畑(農地)にしている場合があります。

 

この場合は、行政にも寄りますが、農地法5条許可が必要と言われ、この農地転用許可はほぼ下りないので、注意が必要です。

 

この時は、畑をやめて、翌年の1月1日時点の課税地目を変更してもらう必要があります。

 

課税地目を農地から雑種地にでも変えてもらえたら、農地ではないので、購入する事が出来ると思います。

 

詳しくは、松屋不動産販売へご相談ください。

 

将来性の見通し

最後に、線引き前宅地での不動産購入においては、将来性について判断する視点も必須です。

 

現状の都市計画に基づく情報だけでなく、将来の開発計画や、エリアの成長予測、地域性、交通事情を踏まえた着眼点が求められます。

 

 

例えば、近隣に大きな公園やショッピングモールの開設計画がある場合、エリアの賑わいとともに物件価格が上昇する可能性があります。

 

その一方で、大規模な工場や廃棄物処理施設が計画されている場合は、快適な生活環境が損なわれる恐れがあります。

 

将来性を見極め、最適な購入を行うことが大切です。

 

 

市街化調整区域と線引き前宅地の今後の可能性

市街化調整区域と線引き前宅地について取り上げます。

 

これらの土地は、そのままでは開発が制限される一方で、将来的に利便性向上などの改善があれば有望な資産となります。

 

農地転用許可制度や市街化調整区域への指定は、ざっくばらんに言えば、「今は開発しないでおこう」という価値の低い土地へのレッテル貼りです。

 

しかし、その可能性に目をつけた開発者や投資家にとっては、リスクを上手に回避しながら価値を見出す場ともなります。

 

不動産市場の動向

不動産市場の動向を捉えるには、供給面と需要面の両方を考えることが肝心です。

 

供給面では、法改正の影響が大きいですし、需要面では経済状況や人口動態が重要となります。

 

具体的には、市街化調整区域や線引き前宅地に存在する開発の可否によって不動産価格や供給量が大きく左右されることが予想されます。

 

一方、人口の減少と都心部への一極集中は、まちづくりに新たな視点を求め、従来の供給過多の地域でも需要が見込まれる可能性があります。

 

最新のトピックスと展望

最新のトピックスとしては、やはり「地方創生」や「空き家問題」が挙げられます。

 

衰退地域における新たな住民誘致や地域資源の活用は、未開発地の新たな可能性を秘めています。

 

 

また、都市部では高齢化や一人暮らしの増加により、これまでの大規模マンション開発から、適切な規模と居住性能を持ったマンションへとシフトしていきます。

 

これらのトピックスは、市街化調整区域や線引き前宅地という視点からも、次世代の住宅供給型を模索するきっかけとなるだけでなく、新たな価値創造の可能性を示していると言えるでしょう。

 

また、空家の3000万円特別控除などを利用して線引き前宅地を売却に出される相続人も出て来ることが予想されます。

 

 

まとめ

これまで記事にしてきました市街化調整区域の線引き前宅地ですが、なかなか狙って線引き前宅地の要件を持つ土地を物件化する事は難しいです。

 

もともとその地域を広く募集している訳ではありませんので、都度、話が来た時の対応として、どこの不動産仲介業者もやっていることでしょう。

 

但し、不慣れな不動産仲介業者に任せてしまうと、市街化調整区域の売買はトラブルの元となりますので、注意が必要です。

 

我々、松屋不動産販売 家デパでは、市街化調整区域の線引き前宅地の取引もたくさんやって来ておりますので、購入も売却もお任せいただきたく思います。

 

 
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