耐震性VS間取りの自由度◆住まいにおける選択のジレンマ◆
皆さんが住まいを考える際、建物の安全性と間取りの自由度という二つの要素に悩むことはよくあることではないでしょうか。
建物の安全性を重視することは災害に対する備えとなります。
間取りの自由度を追求することは快適な生活空間を実現する事となります。
どちらの要素を優先的に選ぶべきか?
両立することは可能なのか?
これから皆様に分かりやすくアドバイスさせていただきます。
住宅性能表示制度
その前に、タイトルにある耐震性を説明する為に、住宅性能表示制度について触れておきましょう。
住宅性能表示制度は、日本において住宅の品質を評価するための仕組みです。
この制度は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)に基づいています。
国によって「日本住宅性能表示基準」と「評価方法基準」が設けられ、国土交通大臣に登録された「第三者評価機関」が建物の検査や評価を行います。
住宅性能評価には、「設計住宅性能評価」と「建設住宅性能評価」という2つの評価があります。
設計住宅性能評価
住宅を建てる前の設計段階での評価です。
この評価では、建物が計画通りに建てられるかどうかが評価されます。
具体的には、設計図に基づいて構造や断熱性能、耐震性能などが評価されます。
建設住宅性能評価
建設工事や完成段階での評価です。
この評価では、建物が設計通りに施工されているかどうかが評価されます。
通常、4回の検査が行われ、建設工程や品質管理が確認されます。
住宅性能表示制度で「設計住宅性能評価」と「建設住宅性能評価」の両方を取得しているということは、その住宅の基本性能が高いことを示しています。
つまり、設計段階から施工段階までの品質管理が適切に行われ、高い基準を満たしているということです。
これにより、住宅購入者は安心して高品質な住宅を選ぶことができます。
耐震等級
では、建物の安全性を取ることの重要性についてお伝えします。
建築物は地震や台風などの自然災害に晒される可能性があります。
日本では耐震設計が義務付けられており、その基準が耐震等級として示されます。
耐震等級は耐震性能を表す指標であり、耐震等級が高いほど地震に対する安全性が高まります。
※グループである松屋地所が提供する注文住宅『Glan First』、建売分譲住宅『REXCRAS』ともに、標準で耐震等級3を取得しております。
耐震等級には、耐震等級1から耐震等級3までの3つのレベルがあります。
耐震等級1
基本的な安全性を満たす(建築基準法が定める)レベルであり、一般的な住宅で使用されることが多いです。
耐震等級2
より高い安全性を持ち、耐震性能が強化(耐震等級1の1.25倍)された建物です。
耐震等級3
最も高い耐震性能を持ち、重要な公共施設や防災上重要な建築物に求められるレベル(耐震等級1の1.5倍)となっています。
耐震等級を選ぶ際には、建物の使用目的や立地条件、ご自身の要望などを考慮する必要があります。
耐震等級3の建物は最も安全性が高いですが、その分コスト増やデザイン・プランニングの制約(開口部の大きさや筋交いの設置)が生じる場合もあります。
一方、耐震等級1の建物は耐震等級3の建物より筋交いや耐力壁の量が少ないので、間取り・プランニングの自由度が高く、お客様の間取りやデザインの希望を反映しやすくなります。
実際に、どれ位違いがあるのか?
同じ間取りで比較してみましょう。
実例
◇(菱形):耐力面材
▲(黒正三角):筋交いダブル
◣(黒三角):制振ダンパー
⊿(白抜き三角):筋交い
このように、筋交い等の量に大きな違いが出てきます。
新築する時は、プランニングの制限に差が出ます。
また、将来リフォーム(増築含む)する時には、壁を取り払ってワンフロアに大きな空間を創ろうとする時に耐震等級によりこれまた差が出てしまいます。
品質確保法
次に、最近の品質確保法(品確法)の施行についても触れてみましょう。
品確法は、2020年に施行された建築基準法の改正によって導入されました。
この法律は、建築物の品質確保を目的として、建築物の設計・施工・監理などに関する基準を定めています。
では、どれ位の建物がその性能表示制度を利用しているのでしょうか?
国土交通省の最新の発表によると、
「設計住宅性能評価書」を取得している割合は新設住宅着工戸数全体の27.8%(4戸に1戸強)
「建設住宅性能評価書」を取得している割合は新設住宅着工戸数全体の23.6%(4戸に1戸弱)
となっています。
第三者評価機関が評価書を発行している数・割合が意外と少ないのが分かるかと思います。
巷では、新築住宅(建売住宅含む)の全てが同制度を利用しているかのように宣伝されていますが、実際の所は4戸に1戸の割合でしかなく、残りの4分の3は利用していないのが実情です。(令和2年度実績)
ですので、その評価のひとつである『耐震等級』については、評価書を取得していない物件は、耐震等級1を多く含んでいる事が推測されます。
もちろん評価は受けていないが、『耐震等級3相当』などの耐震性を持たせている物件もあります。
住宅性能表示制度を利用しない主な理由
木造2階建を想定
- 1.検査費用の問題
検査費で10~20万円
そのための書類作成等で相場は30~40万円のコストアップ
- 2.コストアップ問題
上記検査費用以外にも、最高等級を取得しようとすると部材費が上がる
- 3.工期延長の問題
合計4回の現場検査があり、検査後でないと次工程に進めない
- 4.顧客ニーズの問題
そもそも重要視していない
評価書はないが耐震等級3相当で十分という思い
品確法によって、建築物の耐震性能に関してもより厳格な規定が設けられました。
建物の耐震性能は、建築基準法で定められた耐震等級に基づいて評価されます。
耐震等級1から3までの範囲内で、お客様の要望や予算に合わせた適切な耐震性能を選択することが求められます。
間取りの自由度
次に、間取りの自由度について考えてみましょう。
住まいは私たちの生活の中心であり、快適さや機能性が求められます。
間取りの自由度を高めることで、お客様の個別のニーズやライフスタイルに合わせた住まいを実現することが可能です。
例えば、ファミリー向けの住まいでは、生活の中心であるリビングスペースを広くとることが重要です。
一方、シングルやカップル向けの住まいでは、オープンな空間やワークスペースの確保が求められるかもしれません。
自由設計によって、間取りや内部レイアウトの選択肢は広がります。
壁の位置や開口部の配置、部屋の仕切り方など、お客様の希望やアイデアを具現化することができます。
これにより、家族の成長やライフスタイルの変化に柔軟に対応できる住まいを実現することができるのです。
耐震性VS間取りの自由度
しかしながら、自由設計を追求する場合には、建物の安全性や構造的な制約にも留意する必要があります。
品質確保のため、日本では建築基準法が施行されています。
この法律は、建物の耐震性や耐久性など、建築物の安全性を保証するための基準を定めています。
耐震等級1から3までの耐震性能に関連して、自由設計にはいくつかの制限があります。
例えば、耐震性を高めるためには、壁や柱の配置、構造体の強化、補強材料の使用などが必要となります。
これによって、建物全体の安定性や地震に対する耐性が向上します。
自由設計を追求する場合には、耐震等級を犠牲にすることなく、建物の安全性を確保するための設計手法や工夫が必要です。
お客様の要望やデザインの自由度を最大限尊重しながらも、安全性を損なわずに建物を設計することが非常に重要となります。
上記5枚の写真のような間取りや建物を建築したい場合、耐震等級3を実現することは難しいかもしれません。
前述の耐震等級1~3の比較にもあるように、等級を上げる事により、筋交いの数を増やしたり、耐力面材の量が増えたりすることで、大開口を実現することが困難(壁の量が足りないなど)になる事もあります。
当然構造計算をしてみないとハッキリと断言する事は出来ません。
但し、物理的に足りないものを補う事は難しく、このような場合は、取捨選択を迫られるかもしれません。
まとめ
結論として、間取りの自由度と建物の安全性のバランスは重要です。
例1.お客様のニーズや優先事項、予算、地域の気候条件などを考慮し、耐震等級と自由設計のバランスの見極め
地震のリスクが高い地域に住まれる場合は、建物の安全性を重視することが必要です。
一方で、地震のリスクが比較的低い地域や、耐震性能が特に求められない場合には、間取りの自由度を追求することも可能です。
例2.建物の安全性と間取りの自由度を両立させる方法を見つける
例えば、耐震性能を確保しながらも、内部の仕切り壁を可動式にすることで、間取りの変更が容易になる場合があります。
また、耐震補強工法や新しい構造技術の導入によって、自由設計と安全性を両立させることも可能かもしれません。
アドバイスとしては、
まずは、地域の耐震要求レベルを確認しましょう。
地震活動(活断層など)の頻度や規模、地盤の特性などを考慮して、耐震等級の選択肢を考えます。
また、皆様の予算や優先事項、家族構成やライフスタイルの変化を考慮しながら、間取りの自由度との相談になると思います。
次に、安全性と自由度のバランスを取るためには、プロの建築士のアドバイスを受けることが重要です。
建築士は建物の安全性や耐震性能に関する専門知識を持ちながらも、お客様の希望やアイデアを反映させる設計を行うことができます。
建築士とのコミュニケーションを通じて、お客様の要望と安全性を両立させる最適なプランを見つけることができるでしょう。
最後に
お客様へのアドバイスとして、間取りの自由度と建物の安全性のバランスは個々の優先事項によって異なるということを強調しておきます。
家族構成や将来のライフプラン、地域の気候条件、予算などを総合的に考慮し、建築士とのコミュニケーションを通じて最適な選択を行ってください。
建物の安全性と快適性を両立させるためには、プロの建築士の知識と経験が不可欠です。
建築士はお客様の要望や予算に合わせながらも、安全性を確保しつつ自由度の高い間取りを提案することができます。
住まいは一生に一度の大きな投資であり、私たちの生活を豊かにする重要な存在です。
間取りの自由度と建物の安全性のバランスを見極めることで、お客様が理想とする住まいを実現することができます。
建物の安全性は家族や財産を守るために重要な要素ですが、間取りの自由度も快適な生活を実現する上で欠かせません。
ポイント
最終的な選択をする際には、次の5つを留意することをお勧めします。
- 1.優先順位の明確化
まず、自分や家族の優先事項を明確にしましょう。
安全性を重視するのか、それとも間取りの自由度を重視するのか、またはどちらをバランスさせるのかを明確にすることが重要です。
- 2.地域の特性の考慮
地震や自然災害の発生リスク、地盤の状況など、地域の特性を把握しましょう。
地域によっては耐震性能がより重視される場合もあります。
- 3.専門家のアドバイスの活用
建築士や構造計算などの専門家のアドバイスを積極的に受けましょう。
彼らは建物の安全性とデザインの両方を考慮した最適なプランを提案してくれるでしょう。
- 4.予算の設定
予算も重要な要素です。自由度の高い間取りや建物の安全性を追求する場合、費用も相応にかかることがあります。
予算を設定し、それに合わせたバランスの取れたプランを作りましょう。
- 5.長期的な視点での判断
住まいは長期にわたって利用するものです。
将来の変化や家族の成長にも柔軟に対応できる間取りを考えることも重要です。
安全性だけでなく、快適な暮らしを維持できるかどうかも考慮しましょう。
将来の間取り変更を考える時に、抜けない壁(耐力壁など)で、理想の間取り変更が出来ない事も十分にあります。
最終的な決断はお客様自身が行うべきですが、建築士との密なコミュニケーションや専門家のアドバイスを活用することで、間取りの自由度と建物の安全性をバランス良く実現することができます。
また、我々『松屋地所グループ』では、文中にもありました通り、注文住宅を手掛けている部署があり、新築建売住宅もやっています。
そして、我々『松屋不動産販売 家デパ』では、売買仲介をメインに業務を行っており、土地をお探しの方には、液状化現象が起きにくい地域の土地をご紹介することが出来ます。
中古戸建・中古マンションをお探しの方には、インスペクション(建物状況調査)のあっせんやリフォームのご相談まで幅広い業務を行っております。
今回のコラムのような耐震性と間取りの自由度に関するご相談も、松屋地所グループの総力を挙げて、皆様の相談に乗れると思います。
是非、その際は、松屋不動産販売 家デパに気軽にご相談ください。