不動産一括査定サイトの功罪について
巷には、不動産一括査定サイトがあふれています。パソコン・スマホに『不動産 査定』と入力すれば、我先にと、たくさんの会社が運営する不動産一括査定サイトが、目に飛び込んできます。
こんな見出し見た事ありませんか?
この『不動産一括査定サイト』とは、そこに登録している不動産仲介業者へ、査定・売却のご相談があったお客様を紹介して、『対価を得る』そんな会社が運営しています。
登録している不動産仲介業者は、1件あたり10,000円~15,000円位の費用を支払い、そのご相談者の情報を買っている事になります。
また、サイト運営会社は、その1件の情報を複数の会社に送り、各社から情報提供料を貰います。
例えば、ある地域で10社の不動産仲介業者が契約していたとすると、サイトを経由して得た査定依頼者の情報を、そのまま10社に送れば、サイト運営会社は、10万円~15万円の報酬を得る事になります。
当然、集客を図るには『対価』が必要です。費用が掛るから不動産一括査定サイトを運営している会社は『悪』だと言っている訳ではありません。
我々、松屋不動産販売も数あるサイトの中で、我々が優良だと考えている1社と契約して、不動産一括査定サイトを利用しています。
たくさんあるサイトを厳選する為に、複数のサイトを利用・契約し、いろんな事を、複雑な思いを経験したので少々愚痴っぽくなってしまいましたが、前段は、我々『不動産仲介業者』サイドの話をさせてもらいました。
ここからは、その不動産一括査定サイトを利用される皆様に、注意喚起や良い点・悪い点をお話しできたらと考えております。
◎功績として挙げられる部分
- ・一度に複数の不動産仲介業者から査定書を受け取れる
- ・セカンドオピニオン※的に査定金額を確認できる
- ・高い値段を提示してもらえる???
※セカンドオピニオンとは、医療現場でよく使われる言葉ですが、よりよい決断をするために当事者以外の専門的な知識を持った第三者に求める『意見』、または『意見を求める行動』のことを言います。
不動産一括査定サイトを利用する事自体は、複数の良い点があると思います。やはり1社だけの価格査定では心配だと言う方には、不動産一括査定サイトを利用して、セカンドオピニオン(第2の意見)を聞くことは、長く不動産業界にいる者としても、ここが一番良い事だと言えると思います。
◎罪過として挙げられる部分
・高額な取引が可能であるかのように見せかけている
・事実を誤認させるような表現が多い
・高値での売り出しリスクを考えていない(これは不動産仲介業者にも問題があります)
・高額な取引が可能であるかのように見せかけている
よくある表現で、『査定額の差が1,000万円』なんて書かれている事が多々あります。
確かに下図のようにB社に負けたくないとA社が頑張って査定金額を高めに出す事はあるでしょう。
ですが、査定金額=売買価格ではないので、市場を無視した高い査定金額は、まず売れません。
不動産一括査定サイトいわく・・・
このA社は、売買を成立させたい(売主様の希望と合致)訳ではなく、ただ単純に媒介(売却の依頼)をもらいたいだけです。もちろん、ひょっとしたら売れるかも・・・とは思っていると考えられますが、やはり売る・売買を成立させることを考えているとは思えません。査定価格(市場価格)の130%、140%の売り出し価格で、一体どなたが購入されるのでしょうか?
・事実を誤認させるような表現が多い
宅地建物取引業者であれば、一発アウトと思える文言も、宅地建物取引業者でない不動産一括査定サイトでは頻繁に表現されています。
見解としましては、国土交通省 中部整備局ならびに東海公正取引協議会に確認しましたが、宅地建物取引業者でない事と、公正取引協議会の構成団体や加盟事業者ではないので、明確な違反行為(おとり広告など)と断定できない限り、取り締まりの対象にならないとの回答でした。(だからと言って何をやっても良いわけではありません。)
宅地建物取引業者は、その業務に関して広告をするときは、当該広告に係る宅地又は建物の所在、規模、形質若しくは現在若しくは将来の利用の制限、環境若しくは交通その他の利便又は代金、借賃等の対価の額若しくはその支払方法若しくは代金若しくは交換差金に関する金銭の貸借のあっせんについて、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。
・高値での売り出しリスクを考えていない
私は、不動産を高く売るコツは、早く売る事だと考えています。
長くこの業界に従事しておりますが、どんなに景気の良い時でも『時間をかけて、高く売れた』という事はありません。(バブル期以後の入社なので)
これは、査定金額を下げてとか、売り出し金額を低くしてという事ではなく、適正な(市場価格)で売り出し価格を決め、売りに出したら、一日でも早く、相手方(買主様)を見つけ、売買契約を締結するという事です。
市場価格との乖離が多ければ多いほど、時間は掛かります。経験則となりますが、価格乖離がほとんどない物件は1カ月以内に約30%は成約します。残念ながら、1カ月で売れず価格変更(下げる)をしなかった場合、2カ月目で売れる物件は20%を切ります。同じくそのまま3カ月目に突入した場合、売れる物件は1割以下となります。事実、購入希望者様から店舗にご連絡を頂き、聞かれる事の1つ目か2つ目に『この物件はいつから出ていますか?』とご質問を頂きます。我々もウソはつけませんので、正直に『半年位前からですね』と答えると、『そうですかぁ』と声のトーンが下がります。また、相場(その物件の市場価格)は現状維持をしません。売りに出せば、時間の経過とともに少しずつ下がります。よって、適宜価格を調整する(市場価格に近付ける)必要がありますが、時間の経過とともに、その金額(下げ幅)は大きくなります。
査定価格を高く出して、満足して頂けるなら、いくらでも高く出します。但し、売却を完了するという満足はおそらく得られないと思います。私は、今後も売却が可能な金額で査定をしていきたいと思います。また、松屋不動産販売は、そうあるべきと今後も教えていきたいと思います。
松屋不動産販売株式会社
代表取締役 佐伯 慶智