相続財産評価法!不動産以外の株・・・

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投稿日:2024/11/01

相続財産評価法!不動産以外の株式・預金・動産などをどう計算する?

相続財産評価法!不動産以外の株式・預金・動産などをどう計算する?

相続財産の評価方法がわからず悩んでいませんか?不動産以外の財産、例えば株式や預金、動産の評価は、相続税の申告に欠かせない重要なプロセスです。本記事では、相続財産の評価基準を資産ごとにわかりやすく解説し、節税につながるポイントも詳述します。評価基準が異なる不動産以外の資産に対し、適切な評価を行うことで、税負担の軽減が可能です。上場株式や外貨預金、動産の評価手順や、専門的なポイントについて具体例を交えながら紹介し、相続税申告をスムーズに進めるための知識も身に付きます。相続財産の評価に困っている方や節税を目指す方に役立つ情報が満載ですので、ぜひ最後までお読みください。

 

なお、本記事は3部構成の第3部となります。第1部である【相続財産の評価①】と第2部である【相続財産の評価➁】を先にご覧ください。

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借地・貸家建付地の評価方法と特例活用で相続税を節約する方法とは?

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相続財産評価における「不動産以外の評価」の基本

相続財産の評価では、「不動産以外」の資産を適切に評価することが、正確な相続税申告や節税対策において重要です。上場株式や非上場株式、普通預金や外貨預金、動産など、相続財産の不動産以外の資産は、種類によって評価基準が異なるため、正確な評価方法を知っておくことが求められます。評価額が高すぎると相続税額が増加し、逆に適切な評価が行われれば節税につながるため、不動産以外の評価は節税の観点からも見逃せないポイントです。

 

ここでは、相続財産に含まれる不動産以外の資産の種類や評価の重要性を確認し、具体的な評価方法を理解していきます。

 

相続財産に含まれる「不動産以外」の資産とは?

相続財産には、不動産以外にもさまざまな資産が含まれます。代表的な資産として、上場株式や非上場株式、預金(普通預金や定期預金)、外貨預金、貸付金、生命保険金、ゴルフ会員権、リゾート会員権、動産(自動車や家財など)、さらに書画骨董品や貴金属などが挙げられます。これらの「不動産以外」の資産は、個別の評価基準に基づき価値が算定され、相続税計算のベースとして活用されます。

 

例えば、上場株式は市場価格の変動を基に、相続発生月を含む3か月間で最も低い価格を採用して評価します。これは、相続税額を抑えるために、評価額を合理的に調整できるためです。一方で、非上場株式は流通価格がないため、発行企業の規模や支配状況に応じて「類似業種比準方式」や「純資産価額方式」などの手法で評価します。

 

 

 

また、外貨預金は、相続開始時点の為替相場(対顧客直物電信買相場⇒TTBレート)を使って円換算し、評価額を決定します。生命保険金には、相続税計算上「非課税限度額」が設けられているため、場合によってはその範囲内で税負担を軽減することが可能です。こうした資産ごとの評価方法を理解し、適正な相続税申告を行うことが重要です。

 

相続税における不動産以外の評価の重要性とそのポイント

相続税の正確な計算には、不動産以外の相続財産の評価が欠かせません。不動産以外の資産は、評価が適切に行われていない場合、相続税額が適正値から逸脱してしまうため、正しい評価が節税や適切な納税に直接つながります。

 

たとえば、上場株式の場合、最も低い月平均価格を基に評価することで、相続税を抑えられる場合があります。また、非上場株式については、会社の規模や株主構成に応じて「配当還元方式」や「純資産価額方式」などが選ばれ、適切な評価が節税を可能にします。さらに、生命保険金には500万円×法定相続人の数という非課税枠があるため、これを活用して相続税額を減少させることも可能です。

 

また、動産(車両や家庭用財産など)については、その時点の市場価値や調達価格を参考に評価します。書画や骨董品の場合は、専門家による鑑定評価や取引価格を基にして価値が決定されます。外貨預金や貸付金なども、その特性に合わせた評価方法を行い、必要に応じて専門家のサポートを得ることで、正確かつ最適な評価が可能となります。

 

相続税申告のためには、こうした不動産以外の資産ごとの評価方法を理解し、正確な申告に役立てることが求められます。

 

 

株式(上場・非上場)の評価方法と相続税への影響

相続財産の中でも、上場株式や非上場株式は評価方法が大きく異なり、評価額が相続税に直接影響を与えます。上場株式は市場での価格変動を利用して評価しますが、非上場株式は企業規模や同族株主の有無に応じた特別な評価方法が必要です。ここでは、上場株式と非上場株式のそれぞれの評価方法を解説し、適切な評価が節税にどのように役立つかを確認していきます。

 

上場株式の評価:最終価格と平均価格を使った計算方法

上場株式は、市場で取引される株価を基に評価します。相続財産として評価する場合、以下の4つの価格から最も低い価格を基準にします。

上場株式は、相続時の最終価格(終値)等の4つの価格のうち最も低い価格で評価します。

  • 相続発生日の最終価格(終値)

相続発生日の取引終了時点での株価。

  • 相続月の月平均価格

相続が発生した月の各営業日の終値を平均した価格。

  • 前月の月平均価格

相続発生月の前月における終値の月平均。

  • 前々月の月平均価格

相続発生月の前々月の終値の月平均。

 

例えば、A社株を所有する被相続人が亡くなった場合、相続発生月と前2か月の4つの価格を比較し、最も低い価格を基に評価します。この方法により、株価の変動による影響を抑えながら、相続税を合理的な範囲に収めることができます。市場価格が不安定な場合でも最適な価格で評価できるため、相続税の負担軽減につながります。

 

非上場株式の評価基準:会社規模と同族株主の有無による違い

非上場株式は市場での取引価格がないため、特定の基準を用いて評価を行います。評価方法を決定する際には、まず会社の規模(大会社、中会社、小会社)を区分し、さらに株式の保有者が「同族株主」かどうかも確認します。

  • 大会社

主に「類似業種比準方式」で評価します。この方法では、同業の上場企業の株価と配当、利益、純資産を基に評価額を算出し、企業価値に見合った株価を導き出します。

  • 中会社

大会社と小会社の評価方法を組み合わせた「折衷方式」を用います。柔軟な評価が可能で、企業の規模や特性に合った価格を設定します。

  • 小会社

一般的に「純資産価額方式」を適用し、会社の資産から負債を引いた純資産価額を評価額とします。

 

また、同族株主の有無により「配当還元方式」を採用するケースがあります。会社の実質的な経営権が同族にある場合、安定した企業運営を反映するため、こうした評価手法が活用されます。

 

配当還元方式と純資産価額方式の使い分け:非上場株式の具体的な評価手順

非上場株式の評価において、配当還元方式と純資産価額方式は、企業の特性や株主構成に基づき使い分けられます。

  • 配当還元方式

主に同族株主以外が保有する株式に適用されます。企業が安定した配当を支払っている場合、その配当額を基に株価を算出するため、株式を少量しか保有しない場合に向いています。この方法により、企業の利益状況に基づく合理的な評価が可能となり、相続税を抑えることができます。

  • 純資産価額方式

会社が保有する資産の純資産価額を基に株価を評価する方法で、小規模企業や同族株主が多い場合に適用されます。企業の総資産から負債を引いた純資産を反映させ、資産価値に基づいた評価を行うことで、企業の実態を正確に反映した株価が算出されます。

 

これらの方法は、企業の事業内容や財務状況に応じて選択されるため、評価手法の理解が必要です。特に事業承継が伴う相続の場合、適切な評価が相続税負担の軽減と事業継続に有益です。

 

評価額算出時に気をつける「類似業種比準方式」の使い方

「類似業種比準方式」は、非上場企業の株式評価のうち、特に大規模企業の場合に適用される方法です。同業の上場企業の株価を基に、配当、利益、純資産を比較することで株価を算出します。この評価方法を利用する手順は以下の通りです。

  • 類似企業の選定

評価対象の非上場企業と事業内容が類似する上場企業を選び、その企業の財務情報を収集します。

  • 各要素の比較

収集した類似企業の配当、利益、純資産のデータを評価対象企業と比較し、各要素の相場と合致するかを検討します。

  • 重み付けと最終算出

配当、利益、純資産に対して一定の重みを付け、これをもとにして最終的な評価額を算出します。

 

 

この評価方法により、非上場企業の株価を合理的かつ客観的に評価できるため、相続税の算出において公正な価格設定が可能です。また、他の評価方法と組み合わせることで、企業の特徴に最適な評価が行えます。

 

 

預金・外貨預金の評価方法と円換算のポイント

相続財産には、不動産以外の資産として預金や外貨預金が含まれます。これらの評価方法は、普通預金や定期預金といった日本円での預金と、ドルやユーロといった外貨建ての預金では異なり、それぞれの方法に則って正確な評価を行うことが、相続税の計算において非常に重要です。ここでは、普通預金と定期預金の評価基準と、外貨預金の円換算方法について詳しく見ていきましょう。

 

普通預金・定期預金の評価基準と相続税の取り扱い

相続財産の評価において、普通預金と定期預金は評価方法が異なります。それぞれの預金タイプに応じて評価方法が決定され、相続税の申告に必要な評価額を算出します。

  • 普通預金

普通預金は、相続発生日に預け入れられている残高をそのまま評価額として算出します。通常、普通預金は利息が少ないため、利息を加味せず、残高のみを評価に用います。たとえば、相続発生日に普通預金口座に500万円があった場合、そのまま500万円が相続財産として評価されます。

  • 定期預金

定期預金は、元本に加えて、相続発生日における利息も評価額に含めて算出します。相続発生日に仮に解約した場合に得られる利息を元本に加算し、そこから源泉徴収税額分を差し引いた金額が評価額となります。

評価の計算例
相続発生日に1,000万円の定期預金があり、仮解約利息が50,000円、源泉徴収税額が10,000円だったとします。この場合、評価額は以下のように計算されます。

評価額 = 1,000万円 + 5万円 – 1万円 = 1,004万円

このように、利息や税額を加味した正確な評価が、相続財産として計上されます。

普通預金と定期預金を適切に評価することで、相続税の計算が正確となり、過不足のない申告が可能です。また、税務上の特例や減額が適用できる場合もあるため、税理士などの専門家と相談しながら進めることが推奨されます。

 

外貨預金の評価とTTB(電信買相場)を使った円換算

外貨預金は、相続発生日の為替レートで円に換算して評価を行います。評価に使うのは「TTB(対顧客直物電信買相場)」というレートで、これは金融機関が顧客から外貨を買い取る際のレートに基づいています。TTBレートを使用することで、相続財産としての外貨預金の円評価が現実に即した形で算出されます。

TTB(電信買相場)の役割
TTBは、銀行などの金融機関が外貨を円に買い戻す際に適用するレートで、相続税評価において外貨預金の円換算の基準となります。このレートを使うことで、現実の価値に即した評価が可能となり、適切な相続税計算に役立ちます。

円換算の計算例
例えば、相続発生日に外貨預金として1万米ドルがあり、その日のTTBレートが150円の場合、評価額は以下のように計算されます。

評価額 = 10,000ドル × 150円 = 150万円

このように、相続財産としての外貨預金の評価額を円換算で求めます。為替レートは相続発生日のものを使うため、日々の変動により評価額も影響を受けます。特に為替差益が発生することもあり、相続税申告に際しては最新のTTBレートを確認することが重要です。

外貨預金の評価には、為替市場の変動リスクも伴うため、申告前に専門家へ相談することで、適切な評価が得られるでしょう。

 

 

ゴルフ・リゾート会員権の評価と相続税の計算方法

相続財産に含まれるゴルフ会員権やリゾート会員権は、相続税の計算において重要な評価対象です。これらの会員権は「不動産以外」の資産として扱われ、取引相場の有無や不動産持分の有無によって評価方法が異なります。正確な評価が行われなければ、相続税が過剰に課される可能性があるため、評価基準を理解し、適切な方法で評価を進めることが重要です。

 

ゴルフ会員権の評価方法:取引相場の有無による評価の違い

ゴルフ会員権の評価は、相続財産として計上される際に、取引相場の有無によって評価方法が変わります。ゴルフ会員権には、相場があり売買可能なものと、特定のルールでのみ取引が行われるものが存在します。

  • 取引相場があるゴルフ会員権

取引相場がある会員権は、相続発生日の市場価格に基づいて評価が行われます。具体的には、市場価格の70%を評価額とし、相続税の課税対象額とします。この70%という割合は、資産価値を公平に算出するための基準値であり、国税庁の指針に基づいて適用されます。

評価例
相続発生日におけるゴルフ会員権の市場価格が100万円だった場合、その評価額は以下の通りです。

評価額 = 100万円 × 70% = 70万円

さらに、ゴルフ会員権に「預託金」が含まれる場合、預託金が将来返還される予定である場合には、その返還額を現在価値に換算して加算します。たとえば、相続発生日から5年後に預託金50万円が返還される場合、基準年利での現在価値を考慮して評価に反映させます。

 

  • 取引相場がないゴルフ会員権

取引相場がないゴルフ会員権の場合、評価は会員権の内容に基づいて行われます。たとえば、株式制のゴルフクラブ会員権であれば、株式の価額に相当する金額で評価します。また、預託金制の場合、預託金の返還予定額を基に評価を行い、返還時期に応じた現在価値で調整します。これにより、実際の資産価値に基づいた評価が可能となり、相続税の計算に適切に反映されます。

 

リゾート会員権と不動産持分の影響:契約内容に応じた評価方法

リゾート会員権は、ゴルフ会員権とは異なる性質を持ち、利用権のほかに不動産持分が含まれる場合もあります。このため、リゾート会員権の評価には契約内容や不動産持分の有無が大きく影響します。

  • 不動産持分がないリゾート会員権

不動産の所有権が含まれていない場合、リゾート会員権はゴルフ会員権と同様に取引相場を基に評価します。相場がある場合は市場価格の70%を評価額とし、相場がない場合は利用権としての価値を契約内容に基づいて評価します。

  • 不動産持分があるリゾート会員権

リゾート会員権に不動産持分が含まれている場合、評価はさらに複雑になります。不動産の区分所有権や利用権が付属しているため、不動産評価の基準に従って持分割合に応じた評価を行います。例えば、リゾート施設の一部を区分所有しているケースでは、建物や土地の価額に基づき、所有割合で評価額を算出します。不動産持分がある場合、単なる利用権以上の価値が発生するため、不動産の市場価値や資産価値を反映させることが重要です。

 

リゾート会員権の評価には、契約内容や不動産の持分に応じた評価手法が求められます。特に不動産持分がある場合には、不動産評価の専門知識が必要になることが多いため、専門家と相談して適切な評価を行い、相続税申告に役立てることが推奨されます。

 

 

自動車・家庭用財産(動産)の相続評価

相続財産には、自動車や家庭用の動産も含まれます。不動産以外の資産として、これらは相続税評価においても重要であり、それぞれの評価基準に従って評価額を算出する必要があります。自動車は中古市場での売買価格を基準とし、家具や家電などの家庭用財産は、調達価格と減価償却を考慮して一括評価されることが一般的です。ここでは、それぞれの評価基準と注意点について詳しく解説します。

 

自動車の中古市場を使った評価基準と注意点

自動車の評価においては、相続財産としての価値を算出するために、中古市場での売買価格が基準となります。具体的には、相続発生日における中古市場価格を参考に、実際の取引事例を基にした公正な評価が求められます。

  • 中古市場価格を基にした評価方法

自動車の評価額は、相続発生日に近い時点での中古市場価格で決定します。市場価格は、自動車の年式や走行距離、車種の人気度など、複数の要素で変動するため、信頼性のある中古車査定業者の査定価格や取引実例を参考にすることが重要です

評価例
例えば、相続発生日に被相続人が所有していた自動車が年式2015年のA社製で、中古市場での取引実例価格が200万円だった場合、その評価額も200万円となります。この方法は、市場での需要に応じた評価を可能にし、相続財産としての適切な価値算出を支援します。

 

  • 評価時の注意点

中古車市場は、車種の人気や市場動向によって価格が大きく変動するため、時期や地域によって評価額が異なる可能性があります。特に、希少価値の高い車種や人気のある車種は高額になりやすく、逆に年式が古い車両や走行距離が長い車両は評価額が低くなる傾向にあります。また、相続評価の際には、専門業者に査定を依頼することで正確な評価が得られ、相続税申告においても信頼性が向上します。

 

家庭用財産の評価方法:家具や家電の調達価格と一括評価のポイント

家庭用財産(家具、家電、日用品など)は、相続財産の評価の際に一括して評価することが多く、細かな計算を省略し、全体の価値をまとめて評価する方法が採用されます。この評価基準は、調達価格や減価償却を反映した評価法であり、合理的に相続税の対象額を算出するための基準です。

  • 家具や家電の調達価格と減価償却

家庭用財産の評価額は、購入時の価格(調達価格)を基にし、使用年数や状態に応じて減価償却を行うことで算出されます。減価償却とは、物品の経年による価値の減少を反映した評価方法であり、特に長期間使用された家具や家電製品は、価値が低くなるため評価額も減少します。例えば、購入後5年を経過した冷蔵庫やテレビなどの家電は、購入当時の価格の50%以下になることが多く、その減価償却を反映した評価が行われます。

  • 一括評価のポイント

家庭用財産の評価においては、生活必需品として20万円以下の範囲で一括評価することが可能です。これは、国税庁の基準に基づいており、家具や家電を個別に評価するのではなく、まとめて評価することで申告手続きを簡素化できます。

一括評価の例
例えば、被相続人の家庭用財産として合計15万円相当の家具や家電がある場合、その評価額を20万円の範囲で一括評価することができます。これにより、相続税申告の際の煩雑な手間が省かれ、評価の手続きを円滑に進められるというメリットがあります。

家庭用財産の一括評価は、相続税計算の効率化と、現実的な評価を同時に実現する方法として有効です。特に、家庭内で使用される財産は、使用年数が長くなるほど評価額が下がるため、こうした一括評価によって合理的な相続税申告が可能となります。

 

 

書画骨董品や貴金属の評価と精通者意見の活用

相続財産の中には、美術品や骨董品、貴金属といった高価で評価が難しい資産も含まれることがあります。これらは「不動産以外」の資産として扱われ、評価額が明確に決まっていないため、正確な相続税の計算には専門家の意見を参考にすることが重要です。美術品や骨董品は市場価値に基づいた評価、貴金属は相続時点での買取価格に基づいた評価が一般的であり、それぞれの評価方法を理解して適切な申告を行う必要があります。

 

美術品や骨董品の評価:市場価値と専門家の意見の重要性

美術品や骨董品の評価は、特に難易度が高い相続財産評価の一つです。これらは市場価値が変動しやすく、また作品の希少性や人気度によって価値が大きく異なるため、相続財産として評価するには専門家の意見(精通者意見)が重要な役割を果たします。

  • 市場価値を基にした評価基準

美術品や骨董品の評価は、相続発生日における市場価値が基準となります。たとえば、美術品の画廊価格やオークション価格が参考にされ、現在の市場動向や取引実績に基づいて評価額が算出されます。作品の人気や希少性が市場価値に反映されるため、時価評価が適用されます。

評価例
例えば、相続財産として骨董品の茶碗が含まれている場合、過去のオークションで、100万円にて取引された実績があるとします。精通者の意見により、希少性や状態から120万円の市場価値があると評価される場合、その120万円が評価額として適用されます。

 

  • 精通者意見の活用方法

美術品や骨董品の評価においては、評価の信頼性を高めるために精通者(美術商や鑑定士)の意見が求められます。精通者意見は、税務署が評価額を判断する際の基準となるため、高額な美術品や骨董品の場合は特に重要です。また、鑑定によって万が一贋作と判明した場合には評価額が大幅に変更されることもあります。

 

精通者意見の活用により、評価の客観性が高まるため、相続税申告においても根拠のある評価として認められやすく、トラブルを回避しやすくなります。

 

貴金属の評価基準:相続時点での買取価格の利用方法

貴金属(例:金、銀、プラチナなど)の評価は、相続財産としての価値を算出する際に、相続時点の買取価格が基準となります。貴金属は市場価格の変動が激しいため、相続発生日の最新の買取価格を使用することが重要です。

  • 相続時点の買取価格に基づく評価

貴金属の評価額は、相続発生日の買取価格を使用します。貴金属の価格は日々変動するため、相続時点の価格を確認して評価額を算出することで、現実の市場価値を反映した評価が可能です。たとえば、金相場が1グラムあたり7,000円であれば、所有する金の総量にこの単価を掛けて評価額を求めます。

評価例
相続財産として金が200グラム含まれている場合、相続発生日の金相場が1グラム14,000円であれば、評価額は以下のように計算されます。

評価額 = 200グラム × 14,000円 = 280万円

このように、貴金属の評価額はその時点の市場価格を反映しているため、相続税申告においても信頼性の高い評価が可能です。

 

  • 評価時の注意点

貴金属は価格の変動が大きいため、相続時点の最新相場を確認することが必要です。特に、相続発生から申告までの期間に価格が変動することがあるため、申告前に専門の買取業者の意見も参考にし、正確な評価を行うことが推奨されます。

 

貴金属の評価は市場価値に基づいているため、相続税申告の際には信頼性のある最新のデータを使い、正確な申告ができるようにすることが重要です。

 

 

貸付金の相続財産評価と申告時の考慮点

相続財産の中には、被相続人が貸し付けている金銭(貸付金)も含まれます。貸付金は「不動産以外」の資産として相続税の対象となり、評価方法は元本と利息の合計額を基に計算します。また、貸付先の信用リスクにより、評価額が変動する可能性もあるため、実際の返済能力も考慮することが大切です。ここでは、貸付金の評価方法と、貸付先の信用リスクが評価に与える影響について解説します。

 

貸付金の元本と利息の評価方法

貸付金の評価には、元本と未収利息の両方を合計した金額を使用します。貸付金の元本は貸付契約書に基づく金額であり、利息は相続発生日までに発生した未収の利息を計算します。これにより、貸付金が実際に持つ価値を正確に反映できます。

  • 元本の評価方法

貸付金の元本は、貸付金額そのもので評価されます。たとえば、被相続人が友人に500万円を貸し付けていた場合、その500万円が貸付金の元本として相続財産評価に使用されます。

  • 利息の評価方法

利息は、相続発生日までに発生している未収利息が含まれます。利率が契約書に明記されている場合は、その利率に基づき相続発生日までの期間で利息を計算し、元本に加算して評価します。

評価例
たとえば、500万円の貸付金があり、利率2%で相続発生日までに1年が経過している場合、利息は次のように計算されます。

利息 = 500万円 × 2% × 1年 = 10万円

このため、貸付金の総評価額は500万円(元本)+10万円(利息)=510万円となります。

貸付金の評価額は、契約書の内容や利息発生期間を基に正確に算出され、相続税申告に反映されるため、これらの内容をきちんと確認することが重要です。

 

貸付先の信用リスクと相続財産の評価への影響

貸付金の評価額は、貸付先の信用リスクによっても影響を受けます。借り手である貸付先が返済能力に欠けている場合や、破産手続き中である場合には、貸付金の回収が困難となるため、相続財産としての評価額が減額される可能性があります。

  • 信用リスクによる評価額の減額

貸付先の信用リスクが高い場合、実際の回収が見込めないことから評価額を減額することが認められます。たとえば、貸付先が事業不振に陥っており返済が困難と判断される場合や、破産手続きが開始されている場合は、貸付金の評価額がゼロとなるケースもあります。これは相続税の計算においても現実的な評価額が反映されるため、重要な考慮点となります。

  • 評価額減額の手続きと必要書類

貸付先が信用リスクを抱えていることを示すためには、税務署に対して実質的な回収が見込めないことを証明する必要があります。例えば、破産手続き開始決定書や債権放棄に関する同意書などが求められ、これらの書類を税務署に提出することで、減額申請が認められる場合があります。

評価例

被相続人が500万円を貸し付けていたものの、貸付先が破産手続き中である場合、実質的に貸付金の回収が不可能とみなされ、貸付金の評価額をゼロとして申告が可能です。破産手続きの証明書類を提出することで、評価額の減額が適用され、相続税の負担を軽減できます。

このように、貸付金の評価においては、元本と利息に加え、貸付先の信用リスクも考慮することで、相続税申告における正確な評価を実現します。貸付先の返済能力を確認し、必要に応じて評価額の調整を行うことで、適切な相続税の算出が可能となります。

 

 

国外財産の評価方法と相続税申告の留意点

相続財産には、国内財産以外に「国外財産」も含まれ、相続税の評価においては特に注意が必要です。国外財産には国外の不動産や海外の銀行口座の預金が含まれ、評価方法や申告書類が国内財産とは異なる点が多いため、適切な評価と申告手続きが求められます。また、国外財産調書の提出義務も重要であり、これにより相続税の加算税を軽減するメリットもあります。以下に、国外不動産の評価方法と国外財産調書について詳しく解説します。

 

国外不動産の評価方法:路線価の代替と実務での注意点

国外にある不動産は、国内のように「路線価」を使った評価ができません。そのため、国外不動産の評価には相続発生日の市場価格を基にした実務的な評価方法が採用されます。具体的な評価には、売買実例や専門家の意見を利用することが多く、信頼性のある評価を行うための手続きが求められます。

  • 市場価格の利用と路線価の代替方法

国外不動産には日本の路線価や固定資産税評価額が設定されていないため、相続発生日における現地の市場価格が主な評価基準となります。市場価格は、実際の売買実例や近隣の取引価格を参考にしたり、不動産業者や鑑定士の意見を基にしたりする評価方法が一般的です。例えば、アメリカやヨーロッパの不動産の場合は、現地の不動産取引データを参考に評価額を算出します。

評価例

相続発生日におけるアメリカの住宅の売買実例が500,000米ドルであった場合、その額を日本円に換算して評価額とします。例えば、1米ドルが150円の為替レートであれば、評価額は以下の通りです。

評価額 = 500,000ドル × 150円 = 7,500万円

このように、国外不動産の評価には現地の実勢価格が重要な基準となります。

 

  • 実務上の注意点と専門家の意見の活用

国外不動産の評価は、日本の税務署に対する申告の信頼性を高めるため、現地の不動産鑑定士や会計士などの精通者意見を得ることが推奨されます。また、評価額の裏付けとして、現地の売買契約書や市場価格証明書を添付することで、税務署の審査においても信頼性が向上します。これにより、後々のトラブルを防ぎ、適切な相続税評価が可能となります。

 

国外財産調書の提出義務と申告上の軽減措置

国外財産を所有している場合には、税務署への「国外財産調書」提出が義務付けられています。これは、相続税申告の際に国外財産を適切に把握するために重要な書類であり、正確な記載により加算税の軽減措置を受けられることもあります。国外財産の詳細を記載した調書の提出は、相続税申告においても非常に重要です。

  • 国外財産調書の提出義務と内容

個人が国外に5,000万円を超える財産を所有している場合、その年の翌年の6月30日までに「国外財産調書」を税務署に提出する義務があります。この調書には、国外財産の種類、数量、金額などを明記し、相続税申告を円滑に進めるために必要です。相続発生日の年度の国外財産についても対象となり、相続税の申告漏れ防止に役立ちます。

  • 申告漏れ防止と軽減措置のメリット

国外財産調書を正確に提出していると、相続税申告で申告漏れが発生した場合でも、加算税が軽減される特例措置が適用されます。具体的には、国外財産調書に記載されていた財産に対する過少申告加算税が5%軽減され、相続税負担の軽減につながります。一方で、調書の提出がなかった場合は逆に加算税が5%加重されるリスクがあるため、正確な記載と提出を行うことが重要です。

申告漏れ時のリスクと軽減措置の例

たとえば、国外にある財産について相続税申告で100万円の過少申告があった場合、国外財産調書を提出していれば、加算税が5%軽減されます。一方で、調書を提出していないと加算税が5%重くなり、税負担が増加します。こうしたリスクを避けるためにも、国外財産調書は確実に提出し、相続税申告をスムーズに進めることが大切です。

国外財産の相続税申告では、国外財産調書の正確な提出と専門家の意見を参考にした適正な評価を行うことが、適切な相続税申告とリスク回避のカギとなります。

 

 

相続税申告と不動産以外の相続財産評価の実務

相続税申告においては、不動産以外の「相続財産」の評価も正確に行うことが求められます。非不動産資産には預金、株式、動産、会員権、貸付金など多岐にわたり、それぞれの資産に応じた評価方法を理解することが大切です。特に相続税申告が初めての方や多額の非不動産資産をお持ちの場合、専門家のサポートを受けることで効率的に申告が進められます。ここでは、非不動産資産の評価方法と、専門家への依頼の際のポイントについて詳しく解説します。

 

相続税申告の基本と非不動産資産の評価方法

非不動産資産の評価方法は資産の種類に応じて異なり、正確な評価を行うことで、相続税の適正な申告が可能になります。以下に代表的な非不動産資産の評価方法について説明します。

  • 預金や現金の評価方法

普通預金や現金は、相続発生日の残高に基づいて評価されます。例えば、相続発生日の普通預金残高が100万円であれば、その額をそのまま評価額とします。外貨預金は相続発生日の為替レートで日本円に換算して評価を行います。

評価例
もし相続発生日の為替レートが1ドル150円で、外貨預金の残高が5,000ドルであれば、評価額は以下の通りです。

評価額 = 5,000ドル × 150円 = 75万円

 

  • 株式の評価方法

株式は上場株式と非上場株式で異なる評価方法が適用されます。上場株式は、相続発生日の終値、相続月の月平均額、または前月および前々月の月平均額のうち、最も低い価格で評価します。非上場株式は会社の規模や同族株主の有無により、純資産価額方式や配当還元方式、類似業種比準方式などを用いて評価されます。

評価例
もし被相続人が所有していた非上場会社の株式が500株であり、配当還元方式に基づき1株あたり評価額が1,000円と算出された場合、評価額は以下の通りです。

評価額 = 500株 × 1,000円 = 50万円

 

  • 動産や会員権の評価方法

家庭用財産(家具や家電)は生活用動産として、20万円以下の評価額で一括評価されることが一般的です。ゴルフ会員権やリゾート会員権は市場価格がある場合はその価格を基に評価し、貴金属や美術品は相続発生日の市場価格を基に評価します。

  • 貸付金の評価方法

貸付金は元本と未収利息を合算して評価しますが、貸付先の信用リスクがある場合には、評価額の減額が認められる場合もあります。特に貸付先が返済困難な場合には、その証明資料と共に減額申請を行います。

 

 

各非不動産資産は、個別の評価方法に基づき、正確に評価されることで適正な相続税が計算されます。

 

専門家に依頼する際のポイントと費用対効果の見極め方

相続税申告には多くの専門知識が必要なため、特に非不動産資産の評価が多岐にわたる場合には税理士や会計士などの専門家に依頼することが効果的です。専門家に依頼する際には、費用対効果を見極めることが重要です。

  • 専門家に依頼するメリット

専門家は最新の税法や評価基準に精通しており、複雑な資産評価も迅速かつ正確に行うことが可能です。特に、非上場株式の評価や国外財産の評価など、専門知識が求められる資産については専門家の助言が正確な相続税申告に役立ちます。また、申告時の軽減措置の適用や、税務調査に備えた書類準備もサポートしてくれるため、安心して申告手続きを進めることができます。

  • 依頼費用と費用対効果の判断

専門家に依頼する際の費用は、依頼する業務の範囲や資産の種類により異なります。不動産や非上場株式、国外財産の評価は依頼費用が高額になる傾向があるため、まずは見積もりを依頼し、コストを確認することが重要です。また、費用と得られるメリット(税負担軽減やリスク回避)を比較し、費用対効果を見極めることも大切です。

  • 部分的依頼でのコスト削減

全ての評価を専門家に依頼するのではなく、複雑な評価が必要な部分のみ専門家に委託し、簡単な評価は自分で行うことで、費用を抑える方法もあります。例えば、預金や上場株式など評価基準が明確な資産は自分で評価し、非上場株式や国外不動産など難易度の高い項目のみ専門家に依頼する「部分的依頼」が効果的です。

 

相続税申告において、専門家のサポートは正確な申告に不可欠ですが、費用対効果を考慮して、必要なサポートを的確に選択することで、申告の質と負担軽減のバランスを保つことができます。

 

 

相続財産、不動産以外の財産評価に関する参照URL

参照元:国税庁 財産の評価目次一覧

参照元:国税庁 No.4638取引相場のない株式の評価

参照元:国税庁 同族株主の判定

参照元:国税庁 No.4665 外貨(現金)の邦貨換算

参照元:国税庁 No.1310利息を受け取ったとき(利子所得)

参照元:国税庁 第5章 動産の評価

参照元:国税庁 【国外財産調書及び財産債務調書の提出】

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